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インフルエンザで「学級閉鎖」、ホントに意味ある?

明確なエビデンスはなかったが…

■学校は文科省の指導を右から左へ、にしてはいないか。

 話がちょっとずれちゃいましたが、学校が健康対策をするときも、文部科学省やら教育委員会の「本当に意味あるの?」な指導を鵜呑みにして盲従するのではなく、ちゃんとその対策が生徒の役に立っているのか、無意味で生徒や保護者の負担を増やしているだけではないのか? と自ら検証する態度が必要なのです。そしてそれを生徒にも見せてあげたらよろしい。そうすれば、生徒も「そうか、これが実証的科学的態度なんだな」と先生の立派な姿を見て学ぶことでしょうよ。

 というわけで、インフルエンザ防止に有用な方法をネット検索と論文吟味で突き止めなさい、なんて素敵な夏休みの自由研究になると思います。で、妥当性の高い方法から学校が採用していくのがもっともコスト効果の高いその学校のインフル対策になるでしょう。前述のように学級閉鎖や学校閉鎖はその効果がはっきり分かっていない対策なので、その優先度は下がります。優先度が下がる対策のために保護者が仕事を休んだりして振り回されるのはいかがなものでしょう。保護者の方も科学的態度を学び、学校に「もっと科学的妥当性の高い対策を取るべきでは?」とツッコミを入れるべきでしょう。目指せ、国民総科学的態度!?

 蛇足ついでにもうひとつ。多くの学校では学級閉鎖、学校閉鎖期間中は「外出禁止」にしますが、これも科学的ではありません。要するに学校での集団生活、狭い空間にたくさんの人が長時間いることによるインフルエンザの流行を防ぎたいわけで、別に街を歩いたり、電車に乗ったりしたからといってインフルエンザの流行が増大するわけではありません。理論的には家に閉じこもっていたほうが感染は広がらないでしょうが、外出によるリスクは微々たるものでしょう(でなければ、国民すべて外出できなくなってしまいますからね!)。というわけで、医学的には学級閉鎖、学校閉鎖期間中に外出したってOKです。こういうことも先生がちゃんと生徒に考えさせ、教えてあげるべきなんですよね。

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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